ILO第190号条約「仕事の世界における暴力とハラスメントの撤廃に関する条約」(ILO駐日事務所仮訳)

国際労働機関の総会は、

理事会によりジュネーブに招集されて、2019年6月10日にその第108回(創設100周年)会期として会合し、

フィラデルフィア宣言が、すべての人間は、人種、信条又は性にかかわりなく、自由及び尊厳並びに経済的保障及び機会均等の条件において、物質的福祉及び精神的発展を追求する権利をもつと確認していることを想起し、

国際労働機関の基本条約の関連性を再確認し、

世界人権宣言、市民的及び政治的権利に関する国際規約、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約、あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約、女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する国際条約、全ての移住労働者及びその家族の構成員の権利の保護に関する国際条約、障害者の権利に関する条約など他の関連する国際的文書を想起し、

ジェンダーに基づく暴力とハラスメントを含む、暴力とハラスメントのない仕事の世界に対するあらゆる人の権利を認識し、

仕事の世界における暴力とハラスメントは人権侵害または虐待の一形態であり得ること、また機会均等に対する脅威であり、容認できず、かつディーセント・ワークと相容れないものであることを認識し、

暴力とハラスメントを防止するための相互の尊重と人間の尊厳に基づいた仕事の文化の重要性を認識し、

暴力とハラスメントの行為及び慣行の防止を促進するため、加盟国には暴力とハラスメントを断固として容認しない環境を全面的に整備する重要な責任があること、並びに仕事の世界に関わる全ての当事者が、暴力とハラスメントを自制し、防止し、これに対処しなければならないことを想起し、

仕事の世界における暴力とハラスメントは、個人の精神的、身体的および性的な健康、尊厳、並びに家族及び社会環境に影響するものであることを認め、

暴力とハラスメントは、公共および民間のサービスの質にも影響し、人々、とりわけ女性が労働市場に参入し、残留し、またその中で昇進するのを妨げる可能性があることを認識し、

暴力とハラスメントは持続可能な企業の促進と相容れず、仕事の組織、職場の関係、労働者のエンゲージメント、企業の評判及び生産性に否定的な影響を与えることに留意し、

ジェンダーに基づく暴力とハラスメントは、女性と女児に不均衡な影響を与えることを認め、仕事の世界における暴力とハラスメントに終止符を打つためには、ジェンダーに基づく固定観念、複合的及び横断的形態の差別、ジェンダーに基づく不平等な力関係を含む、根本的原因及びリスク要因に対処するための、包摂的で、統合され、かつジェンダーに配慮したアプローチが必須であることを認識し、

ドメスティック・バイオレンスは、雇用、生産性、健康及び安全に影響を与え得ること、また政府、使用者団体及び労働者団体並びに労働市場に関する制度においてドメスティック・バイオレンスの影響力を認識し、他の諸措置の一環として、それに対応し及び対処するための支援を可能にすることに留意し、

会期の議事日程の第5議題である、仕事の世界における暴力とハラスメントに関する提案の採択を決定し、

その提案が国際条約の形式をとるべきであることを決定して、

次の条約(引用に際しては2019年の暴力とハラスメント条約と称することができる。)を2019年6月21日に採択する。

全文は以下から読めます。(クリックするとPDFで読めます)
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