働くもののいのちと健康を守る全国センター第24回総会活動方針(案) |
《 第24回総会スローガン 》
◇コロナ禍で鮮明になった新自由主義の誤りを転換させ、働くもののいのちと健康が守られる社会をつくろう!
はじめに
2020年当初から日本列島をも襲った新型コロナに対し、日本政府は国民のいのちを最優先にするのではなく、GoToキャンペーンやオリパラ開催に固執し続けました。その結果、5波にわたる感染拡大を繰り返し、2年近くなる今日に至るも、第6波の感染拡大をはじめ国民の不安は払拭されずにいます。
感染拡大が広がるたび、非常事態宣言など政府の場当たり的な政策は、国民に感染予防を呼びかけ行動自粛を求めるばかりで、国民のいのちを守る砦である医療・介護・公衆衛生の崩壊を招きました。そして、コロナ感染しても入院できずに命を落とす事態がうまれてしまいました。その背景にあるのは、新自由主義による政治のもと、ケア労働を軽視し医療・介護・公衆衛生の体制を縮小し続け、国民・働く者に自己責任をおし続けてきたことにあることは明らかです。
しかし、安倍・菅政権を引き継いだ岸田首相も、「新しい資本主義」という言葉を使い、今までとは違う政治を行うかのようなポーズをとっていますが、公立・公的病院の再編計画を見直すこともなく、介護の人手不足に対してもAI機器の導入によって解消できるかのような政策を取り続けようとしています。AI機器は、人の仕事を補助するためのツールであって、人の代わりになりえるものではありません。
今後も暫くはコロナと向き合いながらの活動にならざるを得ませんが、本総会において各地方での活動の経験と教訓を深めながら、コロナ禍のもとでより鮮明になった働くもののいのちと健康を守るため、奮闘していく決意を固め合いましょう。
Ⅰ この一年間のとりくみを振り返って
1 前回総会以降の活動経過(2020年年12月11日~2021年12月8日)
2021年
1月
7日(木) 第1回広報委員会
12日(火) 事務局会議
13日(水) 第1回四役会議
27日(水) じん肺キャラバン実行委員会
28日(木) 事務局会議
29日(金) 労働基準行政検討会
2月
3日(水) 第1回理事会
13日(土) SE労働と健康研究会
17日(水) 労働基準行政検討会
3月
3日(水) 第2回四役会議
31日(水) 労働基準行政検討会
4月
7日(水) 第2回理事会地・方センター部会
10日(土) SE労働と健康研究会
21日(水) 労働基準行政検討会
30日(金) 広報委員会&事務局会議
5月
7日(金) 季刊誌編集委員会・第3回四役会議
26日(水) 地方センター部会
29日(土) 化学物質研究会
6月
1日(火) 広報委員会
2日(水) 第3回理事会
4日(金) コロナ禍の働く人々の健康PJ
11日(金) 事務局会議
25日(金) 事務局会議
30日(水) 第5回労働基準行政検討会・広報委員会
7月
3日(土) 地方センター交流会
7日(水) 第4回四役会議・地方センター部会
22日(木) コロナ禍の働く人々の健康PJ
31日(土) SE労働と健康研究会
8月
3日(火) 広報委員会
4日(水) 季刊誌編集委員会/第4回理事会
9月
1日(水) 第5回四役会議
3日(金) 広報委員会
16日(木) コロナ禍の働く人々の健康PJ
10月
6日(水) 季刊誌編集委員会/第5回理事会
21日(木) 労働基準行政検討会・事務局会議
27日(水) 第6回四役会議
11月
2日(火) 広報委員会
2日(火) 事務局会議
10日(水) 季刊誌編集委員会/第6回(臨時)理事会
13日(土) SE労働と健康研究会
17日(水) 第1回アスベスト対策委員会
24日(水) 第7回四役会議
27日(土) 化学物質研究会
12月
1日(水) 広報委員会
2日(木) 労働基準行政検討会
8日(水) 第7回理事会/第24回総会
2 1年間を振り返って
昨年12月11日に「新型コロナ感染が鮮明にした新自由主義的矛盾を、広い共同で克服しよう!」「今こそ、『8時間働いたら、健康にくらすことができる』当たり前の職場と社会を実現しよう!」をスローガンに掲げ第23回総会を開催しました。
総会は、コロナ禍のもとで、リモートを中心に時間も大幅に短縮した形での開催となりました。総会では、会議の開催も含め意思統一の場が十分に持てず、これまで進めてきた集会や学習会などの活動も困難な状況を率直に出し合いながらも、知恵を出し合い工夫しながら各地方・団体でとりくんできた活動の経験を交流し励ましあう総会となりました。
この1年もコロナ禍のもとで、リアルに集まっての会議等ができない日々が続くなか、いの健センターは「できない」ではなく「できること」を意識し、、Zoomなどのリモート機能も駆使しながら活動をすすめてきました。
(1)コロナ禍における働く人びとの健康権を守る取り組み
コロナ禍が起こる前まで進めてきた各種研究活動など、コロナ禍のもとで同様に進めることが困難
なもと、「いの健」全国センターだからこそできる活動として、コロナ禍のもとで、より明確となった働くもののいのちと健康にかかわる問題や課題に対し提言作りをすすめるため、コロナプロジェクト会議を立ち上げました。
コロナ禍のもと、在宅勤務やテレワークが一気に進む業種や、飲食店やバス・タクシー、旅行業界などの観光・サービス産業などの部門で働く人たちの労働環境は雇用も含め激変しました。また、コロナに感染した人が倦怠感などの後遺症により職場復帰できない状況が生じていることに対して、コロナ感染に関わる労災・公務災害申請状況にも注目してきました。加盟団体から職場や関係分野のコロナ感染より影響や課題また困難な中で勝ち取ってきた成果を共有してきました。また、第5回理事会では「エッセンシャルワーカー」「ハラスメント」「ジェンダー」の3つをテーマにグループワークを行ってきました。新型コロナ感染症は、働く人びとの健康をめぐって深刻な状況を生んだことは確かですが、その中でこれまでの国や行政が進めてきた新自由主義的の誤りが明確となり、若干ではありますが、修正をせざるをえない状況を作り出してきたことも確かです。例えば、「30人学級」「国保の傷病手当金」「新型コロナ感染症の労災認定の挙証責任」など既存の制度の根本にかかる部分についても部分的であれ、修正せざるをえなくなりました。また、低賃金・人減らしが追及されてきたエッセンシャルワーク(生活に欠かすことのできない労働)の役割・価値に国民がきづいたことが契機となり、「看護師・保育士の賃上げ」などの政策を政府が言わざるを得ない状況をつくってきていることを確認してきています。なにより、エッセンシャルワークであったとしても、他の職場と同様に「体調が悪いときは出勤しないこと」ことが職場の常識となり、体調不良者が休んでも機能する人的体制が平時においても整備されるべきことです。
しかし、前進を勝ち取ってきた課題も政府の姿勢を根本的に改めることがなければ、その場限りのものになってしまいます。これだけ医療体制の脆弱性が明らかになったにも関わらず、公的医療の縮小の路線を変更しようとしないことはそのことをよく表しています。
プロジェクトチームを中心に、コロナ禍の状況、前進面、課題、そして分野を共通した政策の作成を進めます。
(2)労災認定基準の抜本的見直し、過労死防止などの取組み
① 政府が見直し作業を進めてきた「脳・心臓疾患に関わる労災認定基準の改定」の動きに対し、学
習資料の作成、いの健全国センターだからこそできる活動として取り組んだ署名については39000筆を集約し政府に提出、パブリックコメントも提出してきました。コロナ禍のもとで、街頭での活動など困難な状況の中でも、構成員個人の繋がりを駆使し1800筆を集約した長野センターの教訓も生まれました。ただし、オンライン署名にも挑戦しましたが、十分に広げることができず、SNSを有効に活用していくことは課題です。
改訂された認定基準は、基準となる労働時間の考え方など、私たちの求める内容からは不十分なものであり、引き続き見直しを求めていかなければなりませんが、今回の改定の中では、機械的に労働時間だけで判断するのではなく、他の要因を切り捨てず総合的に判定するとさせたのは、私たちの運動の成果と言えます。今後、精神に関わる認定基準の改定作業が政府内で進められますので、引き続き運動を強化していかなければなりません。
② 厚生労働省は、2020年11月から21年5月にかけて4回にわたり「過労死等防止対策推進協議会」
の中で議論を進め、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の見直し案をまとめ、7月30日、大綱の変更が閣議決定しました。大綱は、「過労死等防止対策推進法」(2014年制定)に基づき、おおむね今後3年間における取り組みについて定めるもので、今回が2回目の変更になります。
協議会では、当事者代表委員や弁護士・研究者の専門家委員が実効ある大綱策定めざして奮闘されま
した。いの健全国センターとしても過労死ゼロを一刻も早く実現するため、過労死防止等対策協議会あての意見書、また改訂案に対するパブリックコメントを提出し大綱への反映を求めてきました。改訂された「大綱」は、新型コロナ感染症に関すること、フリーランスなど「新しい働き方」に対応した政策を重視すること、数値目標として「インターバル制度の周知」や「週60時間以上の雇用者の割合」を重視することなどの点で前進をさせてきました。しかし、数値目標について実効性をもって着実に前進させるためには、労働基準法、過労死労災認定基準の改訂など、労働行政の抜本的な強化などが必要となっています。
③ 5月17日に「WHO・ILOによる長時間労働による健康リスク・死亡の関係についての報告」が発表されました。この「報告」と照らすと、日本では、週60時間以上働く労働者が8.2%:450万人(平成27年度「労働力調査」)という状況であり、早急に対策を講じることが求められています。そもそも、2019年4月から施行された(改正)労働基準法では、時間外労働時間の上限が「1か月100時間」「2~6か月で1か月あたり80時間」とされており、「報告」の時間数をはるかに超えています。
2つの国際機関が示した内容を政府は真摯に受け止め、認定基準を含め抜本的に改正すべきです。
いの健全国センター理事会として8月3日の理事会において「『WHO/ILO 長時間労働と死亡の関係についての報告』を受け、日本の長時間労働規制の遅れを見直すことを要求する」見解を発表しました。
(3)「あやまれ、つぐなえ、なくせじん肺・アスベスト被害」
建設アスベスト裁判は、2008年5月に約300人が東京地裁に提訴したことを皮切りに、全国で取り組まれ、今年5月17日に最高裁で4訴訟(東京・神奈川・京都・大阪)第1陣の判決がありました。判決は労働者だけではなく、一人親方等に対する国の責任を認めたこと、また建材企業に対しての共同行不法行為責任を確定させたことなど画期的な判決でした。一人親方等に対する国の責任について、労安法57条の「物」の規制や22条等の「場所」の規定については、「健康障害を生ずるおそれのある労働者に該当しない建設作業従事者も保護する趣旨」との判断が示されました。このことは、今後フリーランスや非正規で働く人の労働安全衛生においても重要な判断と言えます。
13年にわたる原告・弁護団・支援者の力でかちとった成果です。しかし、判決では屋外作業者の曝露を過少に評価し枠外に追いやるなど課題を残した部分もあります。その後の国会で「特定石綿被害建設業務労働者等に対する給付金等の支給に関する法律」が成立しました。法の着実な実行とともに、対象者(患者)の掘り起しに取り組む必要があります。
引き続き、アスベスト対策委員会において、「屋外作業者未救済非対象問題の突破」「屋外曝露、環境暴露との関係、検討」「包括的アスベスト被害救済制度の創設を求める運動」「アスベスト飛散防止、除去技術を引き上げるために『建築物石綿含有建材調査者』を増やす」課題等を議論していくことにしています。
(4)地方センター交流集会の開催
コロナ禍のもとで、苦労しながらも奮闘されているそれぞれの地方センターの活動をお互いに交流・活動推進のため、7月3日に地方センター交流集会をリモートで開催しました。集会では、特徴的な活動を全体会で共有しあい、Zoomのブレイクアウト機能を活用し、分散会形式でのディスカッションも行いました。いの健活動の重要性と同時に、そのことを継続させていくための後継者づくりの課題も出され、今後もZoomを活用しテーマ別に交流できる場の設定も行っていくことも必要です。
(5)SE労働と健康研究会
昨年来取り組んできた「新型コロナ感染症とIT産業労働者の実態調査」の中間分析を使い、テレワークの実態や課題を発信してきました。「リモートワークと健康、そしてコロナパニック、SE労働者の場合」をパワーポイントにまとめ、ホームページとYouTubeにアップしました。また、研究会メンバーが、テレワークの実態と課題を「学習の友」誌、及び、「検証・テレワーク」(学習の友社)に執筆を行いました。
また、JMITU日本IBM支部の大岡委員長から日本IBMにおけるテレワークの現状をお聞きし、テレワークの普及の中で成果主義と自己責任を追及されることの矛盾と今後の働き方について学習、討論を行いました。
(6)化学物質と健康研究会
化学物質に関する事例検討および厚労省の検討会がまとめた「職場における化学物質等の管理のあり
方に関する検討会報告書」の検討を中心に行ってきました。検討している事例としては、①調色作業を行っていた労働者の特発性肺腺維症(新潟センターより)、②建設作業者の膀胱がん(板橋センター)③日本製鉄八幡コークス膀胱がん、④ガラス繊維縫製職喘息他、⑤職業性膀胱がんFさんの事案など、地方センターや「職業がんをなくす患者と家族の会」への相談事例等です。ここ1年、相談が増えている傾向があります。
また、福井の三星化学工業の膀胱がんの損害賠償裁判について、5月11日に福井地裁は、会社側の
安全配慮義務を認め、原告ら慰謝料支払いを命じる判決を出しました。会社側が控訴せず勝利が確定しました。しかし、会社側は、原告団から申し入れた謝罪や再発の場合の補償、職場改善に向けた協議に対しては不誠実な対応を行っています。この事案は、三星化学工業の労働者が個人加盟していた化学一般労連に相談したことをきっかけに、現地での労働組合の結成、オルトトルイジンによる膀胱がんの全国的な告発へとつながった事案です。「いの健」センターでも当初から支援を行ってきました。判決は、「SDS(安全データシート)に有害情報、発がん情報があれば、企業はそれだけで充分に対策をしなくてはならない」としました。法規制がなくとも対策をとらなければ安全配慮義務違反に問われるという重要な判決です。
働くものが、仕事による被災であることが長年かかって裁判で認められても、その人の人生は戻ってきません。それだけ、国や会社側には、働くものが被災することなく安全・安心に働くことのできる環境を備える責任があることを強く求め続けていかなければなりません。
厚労省の「管理のあり方についての報告書」(7月19日発表)については、「化学物質の自律的管理
理」が提起されていますが、日本の中小零細企業での実施ができるのかなどの危惧があり、いの健としての「提言」を検討していきます。
(7)季刊誌・通信の発行、ホームページの充実
季刊誌・通信については、定期的に広報委員会・編集委員会を開催し、発行時期にあった記事とともに、各団体・全国の動きを知らせられる編集に努力してきました。季刊誌のテーマは「障害のある人の働く権利を考える」(2021年2月)「エッセンシャル労働と非正規問題-公務労働を中心に」(2021年5月)、「アスベスト問題のこれまで、これから」(2021年8月)、「コロナ禍のハラスメント根絶に向けて」(2021年11月)と、働くもののいのちと健康をかかわるテーマを時宜にかなってとりあげています。専門家の論文と労働組合などの実践が掲載されています。今後、さらに活用される取り組みを検討することが必要です。
ホームページにも、各種情報を提供するようにしてきました。情報の共有をスムーズに行えるようホームページによる発信、活用をさらに強化することが必要です。
(8)その他
いの健全国センター事務局として、働くものに関わる労働法制の動きを掴むために、労働法制中央連絡会に参加してきました。
Ⅱ 働くもののいのちと健康をめぐる情勢
(1)社会・政治情勢
① 2年にわたるコロナ禍のもとで、政権についていた安倍、菅政治は、国民・労働者のいのちを最
優先にすることなく、「安全安心のオリンピックの開催」という言葉に象徴されるように、根拠もなく安全神話を振りまき、5波の拡大を繰り返してきました。拡大が広がるたびに、緊急事態宣言を繰り返すばかりで、感染しても入院できずに在宅で命を落とす国民が(警察が把握しているだけでも800人を超える)後を絶ちませんでした。その背景にあるのは、新自由主義による公務公共の削減、医療介護体制の不足にあったことは明らかです。
安倍・菅政権を引き継いだ岸田政権は、総選挙を前に新自由主義の限界に言及せざるを得ず、「新し
い資本主義」を打ち出すとともに、医療・介護・保育従事者への賃金アップを公言しました。しかし、その内容は、これまでの政治を国民にいのち・暮らし再優先に変えるものでないことは明らかです。
② 10月31日に投開票された総選挙は、自民党は議席を減らしたものの、日本維新の会が政権への批判票を取り込む形で議席を増やしました。注目された野党共闘は、地域ごとに様々な課題がある中でも、住民の要求に基づき、今の政治を変えるにはこの道しかないと本気の共闘が進んだ選挙区では勝利、もしくは接戦に持ち込んだと報じられています。しかし、史上3番目に低い投票率にあるように、劇的な政治転換をもたらすにはならなかったばかりか、自公に「維新」の議席数を加えると、岸田政権が狙う「改憲」論議が一気に進みかねない状況と言えます。
③ 政府は、第5波が落ち着く中でようやく無料のPCR・抗体検査の拡充を打ち出しました。
しかし、病床削減を前提とする公的・公立病院の再編見直し計画を見直す姿勢は示さないばかりか、
「幽霊病床」の活用で第6波に対応するとしています。「幽霊病床」という言葉を使い、医療機関における補助金の不正取得を問題視していますが、病床確保に見合う医療スタッフの確保の計画もまともに示さない無責任ぶりです。計画推進は地方自治体の議論に委ねられていますが、計画通りには進んでいません。第6波の拡大が現実の危機となりつつあります。第5波の教訓を活かした先手の対策が行われるよう監視を強める必要があります。
(2)コロナ禍での働くものをめぐる状況
① コロナ禍は、それまでも問題になっていたことがより鮮明になりました。
特に、正規労働者と非正規労働者の中にあった格差は、そのことにとどまらず、雇用の問題で非
正規労働者に襲いかかりました。そのことは、非正規労働者の中でも多数の女性労働者に表れています。非正規雇用で働く多くの女性が仕事を失い、「ステイホーム」が強いられるもとでDV被害が急増し、女性の自殺の増加率は男性の5倍に達しているという統計もだされています。
日本は、ジェンダーギャップ指数で156ヵ国中120位と、先進国中異常な低位を続けています。
② 非正規労働者の中には、その仕事だけでは生活が成り立たず、ダブルワーク・トリプルワークを余儀なくされている人が多くいます。当然、その人たちの労働時間は過労死ラインを超えていることが安易に想像できます。8時間働けば、まともに暮らすことができるように、最低賃金1,500円は喫緊の課題であり正当な要求です。
また、コロナ禍の中で飲食などの宅配サービスが目立つようになりました。しかし、それらに従じ
する人は、雇用によらない働き方に類別され、怪我等の場合の補償もないことから、法整備が求められます。
③ コロナ禍のもとで、日本の医療や公衆衛生体制の脆弱な状況がより鮮明になりました。その背景に、政府が進めてきた公務公共部門の縮小、医療費削減政策や保健所減らしがあったことは明白です。同時に、医療や介護、公衆衛生、保育等それらの仕事の重要性とともに、そこで働く人たちの賃金をはじめとした処遇の悪さ、人員不足の状況も可視化されました。
④ 地方センター、全労連や各種団体が行っている相談会に訪れる相談者の中で、女性の割合が増えているとの報告も顕著です。あわせて、男女を問わずメンタルヘルスの相談も増加しています。その背景ある、職場におけるハラスメントの問題は深刻です。ハラスメントの内容も多岐にわたっており、ハラスメント防止とその対策は急務です。
2020年4月からは、ハラスメント対策が中小企業の事業主にも義務化されます。実効あるハラスメント対策が行われよう実態をつかみ、法改正を含めた運動が必要になってきます。
⑤ 第一次産業従事者の安全・健康問題も注視しなければなりません。新型コロナウイルスの影響で多くの分野で人手不足が深刻になっていますが、第一次産業も同様です。特に、労働力不足を支えていた外国人技能実習生が来日できず深刻さが増している状況があります。また、就業者数の減少と共に高齢化が急速に進み、農業では高齢化率70%にも及んでいます(2019年)。
農業は全産業の中でも災害発生率は最も高く、特にトラクター、耕運機などの機械による死亡事故が多くなっています。農作業による死亡事故は若干減少傾向ですが、300件を超える水準で推移し、事故の約85%を65歳以上が占めています。農林水産省の基本計画では食糧自給率(カロリーベース)を2025年までの45%にするとしていますが、農業に携わる人の安全問題を抜きに考えることはできません。自然環境を保全し食糧を生産する農業の役割を正しく認識し、農民の安全や健康を守る取り組みと連帯する必要があります。
⑥ 商工業者をめぐる状況は、新型コロナルス感染対策を理由とした営業・経営の制約を課される一方、それにみあった補償を行わない政策により、かつてない厳しい状況が続いています。また、飲食・サービス・観光業など対面での営業には感染の不安もぬぐえない状況が続きました。持続化給付金など直接支援の拡充や中小業者に対する税と社会保険料の負担減免などが必要です。
新型コロナウイルス感染症の場合、昨年から、国保の傷病手当金が特例として従業員に支払われるようになりました。事業主も対象とする場合は、自治体が決めていくことになりますが、今年3月現在、15自治体で行われていることが厚労省の発表でわかりました。独自の傷病見舞金制度を創設した自治体も生まれています。全商連などの運動によるものです。
⑦「公務災害」「労働災害」の申請件数はコロナ禍の影響も含め前年より増加しています。しかし、コロナ感染状況と見比べると、コロナ感染による申請の少なさを注視しなければなりません。
11月21日現在で、全国におけるコロナ感染者数は172万人を超えています(JX通信社/FASTALERT)。一方で、10月31日現在で労災保険請求20702件、9月30日現在の公災請求は785件ですから、感染者数172万人の内で労働者数はわかりませんが、申請者の少なさは明らかです。
コロナ禍のもとで、人員が全く足りず青天井に残業を強いられる保健所職員や医療従事者の現場実態がありました。コロナ感染拡大当初は、職場に迷惑をかけられないとの思いから、体調が悪くても休まない(休めない)という誤った対応からクラスターが発生した事例もありました。こうした問題の背景には、平常時から足りていない人員不足があり、国の責任は重大です。
(3)労働行政をめぐって
①裁量労働制、その他の柔軟で自律的な働き方を可能とする労働時間制度
労働基準法の労働時間規制の見直しにつながる裁量労働制等の検討は、現在、厚生労働省の「これからの労働時間制度に関する検討会」で審議されており、2022年通常国会に法案提出がされる見通し
です。2018年の「働き方改革国会」では、裁量労働制の実態に関わる虚偽データ(裁量労働制のもとで働く労働者の実労働時間が一般的な労働者より短いとされた)が大問題となり、企画業務型裁量労
働制の対象業務の拡大にかかわる法案部分が撤回されました。
経済団体や一部の学識者は、「一般の労働者よりも、裁量労働制適用労働者の方が長時間労働に見えるのは、裁量労働制の効果ではなく、業務の種類が異なるから」と主張、今回の調査では、裁量労働制の適用対象となる業務・職種に限定し、制度適用労働者と非適用労働者を比較する手法がとられています。
その調査結果をみると、裁量労働制適用労働者の労働時間は、同種の業務に就く非適用労働者より週平均で2時間長く、深夜労働や持ち帰り残業の頻度が高い上、過労死ラインで働く人が14%みられました。
「裁量労働制実態調査」から言えることは、業務の遂行方法や時間配分についての一定の裁量を労働者に付与するために、原則的な労働時間規制の適用を外す必要はないということと、現行の裁量労働制において要件が守られていない事業所が一定割合あり、健康被害が発生している可能性があるため、規制強化が必要ということでした。
しかし、検討会の学識者の多数は、裁量労働制の拡大に前のめりにみえます。例えば、荒木座長は議論の冒頭で、「労働時間の長短の議論にとどまらない幅広い視点も必要」と述べ、「裁量労働制は長時間労働の温床」との批判をかわし、柔軟な働き方を進める意義を議論しようとしています。他の委員も、調査結果から、裁量労働制適用労働者の健康評価が非適用労働者と変わりない点や、労働時間は長めでも「裁量のある働き方のおかげで仕事の満足度は高い」等として裁量労働制に好意的であり、適用対象業務の拡大等へと議論が進む雰囲気が濃厚です。
現在、検討会での議論は進んでいませんが、論点としては「その他の柔軟で自律的な働き方を可能とする労働時間制度等」が示されており、こちらも警戒が必要です。日本経団連が、21年1月に発表した「経営労働政策特別委員会報告」では、「新しい労働時間法制」との曖昧な名称のもと、一定の健康確保を措置し、業務遂行の手段・方法を労働者本人に委ねることを要件として、「働く場所・時間帯をすべて本人に委ねる」労働時間法制を実現すべきと言い出しました。健康確保措置の内容は、四半期ごとの医師の面接指導、複数月で長時間労働になった場合の除外、労使委員会による就労状況のデータでの確認と改善の審議、健康や仕事の成果についての相談窓口の設置などで、それらを満たした場合、「時間外労働に対する割増賃金支払い義務が免除される法的効果を付与する」べきとしています。対象者の年収要件などなく、「すべての働き手が適用対象」としており、採用時に、この制度に合意する人だけ労働契約を結ぶというやり方で、労働者に労働時間規制の適用除外を無理強いすることも可能となります。
政府や財界、使用者の御用学者がいう「働きやすさ」を高める措置には、長時間労働、未払い残業の合法化、健康破壊につながる内容が仕込まれています。労働基準法の改悪を許さず、裁量労働制の規制強化と指導の厳格化、11時間以上のインターバル規制の義務化、上限規制の適用猶予とされてきた自動車運転者の改善基準告示の改善、医師に適用される過労死ラインの2倍の上限の撤回、1日の労働時間規制の強化と法定労働時間の削減を実現すべく、運動を強める必要があります。
②ジョブ型雇用
「ジョブ型雇用」については、「多様化する労働契約のルールに関する検討会」のテーマのひとつとして議論されています。これは「多様な正社員」の雇用形態を指す言葉で、職務限定だけでなく、勤務地限定の雇用を意味しており、検討会での議論の中心は、勤務地変更(転勤)を軸として行われています。労働条件において、転勤の有無や転勤の場合の条件の明示を使用者に義務付けることは、使用者に合意内容を遵守させるために役立ちます。また、職務の明確化は、融通無碍な業務の拡大や応援等の指揮命令を防ぎ、労働時間の短縮が進むとの期待、全国転勤を野放図に認めている現状に規制を加えるべきとの論点に期待する声もあります。
しかし、使用者側が意図しているのは、多様化される働き方の労働条件を明示する義務を強化し、トラブルを避けようということではありません。使用者側の狙いは、第一に、労働契約において示された勤務地や職務が無くなったことを理由に、解雇規制を緩める点にあります。第二に、無期転換した労働者を、職務限定もしくは勤務地限定雇用とすることで、他の正社員との待遇格差を合理化し、均等均衡待遇確保の抜け道を整備することにあります。これは、無期転換した労働者の待遇改善をはかるべきとの労働者側の主張を封じる手段として活用しようというものです。第三は、労働法の規制から外れる個別企業内の賃金体系に係る利用です。勤続や経験によって右肩上がりをする賃金カーブを、職務給要素で抑え込み、かつ、職務・業務の達成に関する成果・業績主義要素を高めて労働者の待遇を個別化(労働組合の交渉による集団的賃金決定からの分離)させるというものです。
解雇規制緩和と賃金の抑制、待遇格差の拡大の道具立てとして、ジョブ型雇用論には立法の視点だけでなく、職場における使用者の動きへの対応が必要です。
③「副業・兼業」
コロナ禍による残業の減少や休業による賃金減額によって、労働組合のある職場でも、労働者の側から副業・兼業を求める声があがっています。しかし、副業の危険性は、長時間労働による健康障害、労災の多発等の問題をはらんでいます。政府はこれまでも副業・兼業の普及促進に向け作業を進めてきました。2018年1 月には、厚生労働省は「モデル就業規則」の「副業兼業禁止規定」を削除し、副業・兼業容認の内容に書き換えました。当初、副業兼業の解禁に消極的であった日本経団連も、人材ビジネスと足並みをそろえて推進に転じ、2020年9 月には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が改訂されて、「労働時間の通算制度」(労働基準法第38条。複数の会社との契約で働く労働者の労働時間を通算)について、「労働者の事前自己申告」要件が記され、行政による事後の指導監督が、労働者の未申告を理由として及ばなくなる工夫が施されました。また、簡便な労働時間管理の方法(管理モデル)が策定され、副業先との合意であらかじめ時間外労働を措定し「固定残業代」を払う方法が準備されました(みなし時間を超えた場合は割増賃金支払い必要)。政府は副業・兼業について「働く側の権利」として正当化しながら、ガイドライン内で「使用者の指示による副業」の場面を想定し、その場合は「健康確保措置を実施することが適当」と対応策を示しました。自らの雇用する労働者を他の企業で働かせるのは、派遣事業許可を得ていなければ、職業安定法違反ですが、厚生労働省はガイドラインの審議でこうした法的問題を検討もせず、後になって「出向の一形態として合法」と打ち出しました。
これら、一連の動きを見れば、今の使用者は、雇用する労働者に対して、他社で働 くよう指示を出すことに前向きとなり、政府はそれに追随して制度整備や解釈変更を進めていることがわかります。また、副業・兼業を認めている企業の多くは、「雇用でない副業に限り許可する」との就業規則をもっていることから、労働者のフリーランス化を進めるための手段として副業・兼業が位置付けられていることも明確です。
④テレワーク
コロナ禍で、テレワークは感染防止や通勤時間の解消に役立つことから、労働者の中にも一定の支持があります。労働組合として、一般的な8時間労働規制のもと、客観的方法による労働時間の把握・記録を徹底させ、私生活と仕事との境界を曖昧にしないことや、自宅を就労場所とする経費の使用者負担、プライバシー保護、監視の禁止などの運用ルールを協約化して守らせれば、これを必要とする労働者に対して、一定の「働きやすさ」を保障する施策にもなりえます。この、「働きやすさ」などから生み出される利益を経営者側だけのものにするのではなく、労働者の処遇につなげさせなければなりません。
一方で、「テレワーク」は、労働時間と生活時間を区別しにくくし、長時間労働やサービス残業の一因となっています。労働時間を厳格に管理しなければなりません。時間外労働・休日労働・深夜労働を厳しく制限し、安全衛生確保に実効性を持たせるとともに、安衛法の事業所単位の法律のあり方についても問題意識を持つことが重要です。欧州連合(EU)が実現している「つながらない権利」(勤務時間外や休日に業務上のメッセージや電話に応じない権利)の確立が求められています。
また、テレワークを行うにしても、すべての労働者の自宅にその環境があるわけではなく、仕事に適さない環境(インフラ整備やスペースをはじめ様々)のままでテレワークを強いられている状況があります。
しかし、経済界がテレワークに求めているのは、労働時間規制を骨抜きにすることです。そのため「みなし労働時間制」の採用を進めるケースが多発しています。本来、事業場外みなし制は、携帯電話のない時代の外回りの営業職のように「労働時間を算定し難いとき」に適用されるもので、テレワークのように端末の回線が常時接続され、メールも携帯電話も使える場合は、労使の連絡も労働時間の算定も容易なケースでは制度の適用は不可能なはずです。ところが、労働組合や法律家の反対意見を押し切って、21年3月に制定されたテレワークガイドラインに、事業場外みなしが可能であるとしました。
さらに同ガイドラインでは、使用者の労働時間把握義務を緩和しました。「自己申告された労働時間が実際の労働時間と異なることを客観的な事実により使用者が認識していない場合には、申告された労働時間に基づき時間外労働時間の上限規制を遵守し、かつ、同労働時間を基に賃金の支払い等を行っていれば足りる」としました。テレワークでは、事業場での働き方以上に長時間労働となる上、未払い残業が横行する傾向、それも評価(査定)を気にして、実態を申告できない泣き寝入りがあることがはっきりしているのに、こうした措置をとるのは、長時間労働に係る使用者責任を軽減し、労働者の自己責任を高めるものにほかなりません。
⑤医療関連法(医師の長時間労働容認)
5月21日に成立した「良質かつ適切な医療を効率的に提供する体制の確保を推進するための医療法等の一部を改正する法律」は、「長時間労働の医師の労働時間短縮及び健康確保のための措置の整備等」との名目とは程遠いものでした。2024年4月から医師の時間外・休日労働の上限規制は、「月100時間未満、年960時間」。さらに三次救急医療機関や、急患の多い二次救急医療機関、在宅医療、高度医療のために必要と認められる医療機関と研修医等においては、「年1860時間」もの水準を認めており、過労死容認の内容でした。
また、同法には、医療関係職種の業務範囲の見直しも盛り込まれ、タスクシフト・シェアを推進し、医師の負担を軽減するとしています。これも、医師以外の各職種の繁忙さと長時間労働から目を背け、医療の質・安全性の確保の上で問題です。
⑥外国人労働者の安全と健康
現在、国内には172万人の外国人労働者が存在し、その内77万人(約45%)が留学生アルバイトと技能実習生です。技能実習先の労働条件の劣悪さから実習先から離れ不法滞在になってしまうと不法就労中で病気になっても治療すら受けられないという事案は頻発しています。熊本では、妊娠を言えず、
孤立出産・死体遺棄で有罪判決がでるという事態も起こりました。入管収容中にスリランカ女性が死亡した事件は、「詐病」を理由に充分な治療が行われず亡くなり、家族が訴えを起こしています。
コロナ禍では、実習生が来日できず、「営農がままならない」「遠洋漁業にでられない」などの報道がされ、国内の産業を外国人労働者が担っていることがますます明らかになっています。
しかし、2021年に廃案になった入管法改正案は、外国人の人権について度外視するような内容でした。
全日本民医連が加盟事業所にアンケート調査を行ったところ、特に非正規滞在者については、国保・生活保護制度などあらゆる社会保障制度から除外されている上、就労が禁じられているため、仮放免中に体調を崩しても、医療を必要とした場合医療費の支払いが必然的に困難となるケースが多いこと、民間の支援団体は数も少なく資金が潤沢にあるわけではない実態があることなどがわかってきました。民医連の無料低額診療を活用するケースも増えていますが、医療機関側の負担も大きくなってきます。
そもそも日本は、国際的に異例な「全件収容主義」をとり、司法の関与もなく、入管行政が難民と認定しなければ、原則として身体の自由を奪い、収容を行う方法をとっており、その解消が求められてきましたが、政府は批判を受けとめることなく、人権侵害を続けてきました。収容中の死亡事件や自殺も起きており、民主国家における行政機関として、あってはならない状態に陥っています。
⑦化学物質のリスク評価に係る検討会報告
化学物質管理について、政府は「自律的管理にまかせる方向」を打ち出しています。現在、有害性の高い物質についての対応は、国がリスク評価を行い、特定化学物質障害予防規則、有機溶剤中毒予防規則、鉛中毒予防規則、粉塵障害防止規則等の対象物質に追加し、曝露防止のためにこうずべき措置を、国が個別に法令で定めるという仕組みです。危険な物質を認定してからの対策で、常に後手に回り、死亡事故を追いかける対応となっています。そこで、今後は国が、化学物質についての個人の曝露濃度の管理基準を決め、危険性・有害性に関する情報を伝え、事業者がその情報に基づいてリスクアセスメントを行い、曝露防止のための措置を自ら選択して実行する「自律的な管理」へと見直す方向が打ち出され、有機溶剤規則、鉛中毒規則、粉塵等規則などは、5年後に廃止していくとされています。現行制度に問題点があるとはいえ、自主管理任せは危険であり、対応策を研究し、政府の方針を変えさせる必要があります。
Ⅲ 2022年度活動方針
コロナ感染拡大第5波は収まっている状況ですが、第6波の想定をしておかなければなりません。また、感染時の治療薬が行き渡らないもとでは、2022年もコロナと向き合いながら活動をスタートせざるを得ません。
したがって、全国規模でリアルに集まって行うような大規模な企画的な方針提起を控えながらも、リモートを駆使し、いの健運動の前進をはかっていきたいと思います。リアルに集まって行う企画などは、コロナ感染状況の推移を見極めながら、可能と想定・判断できる時点で四役・理事会で議論を行い決定していきます。なお、予算については年次の途中でも可能なように編成します。
1 全国センターとして情報センター的役割の強化・発展をめざします
① 各地方センターや単産、加盟団体が企画する学習会・セミナー・交流会などの情報発信を行い、主催者の許可は当然のこととし、一定のルールを確認しあいながら、相互乗り入れができるようにし、学習・交流を深められるようにします。
② 各地方センターや単産・加盟団体地方センターの、労働局要請、自治体要請などの要求項目等を一覧にし、配信していきます。
③ コロナ禍の状況を見極めて、リモートを活用しながら「地方センター交流集会」の開催を行います。
2 第3期カレッジの実施
① 15年記念事業として行ったカレッジの目標は後継者育成でした。後継者育成は今日的にもさらに重要となっており、コロナ禍(ポストコロナ)のもとで職場の労安活動の強化・発展が求められています。
② 開催に向けて、プロジェクトを発足させ企画立案(学習➟グループ討議(ワーク)➟発表・交流)をすすめます。開催にあたっては、リモートを基本に検討し、経費的にも時間的にも参加しやすくなる利点を生かして、企画の持ちにくい組織や遠方からの参加呼びかけを強めます。
3 季刊 働くもののいのちと健康」の活用をはかります
「季刊誌」は、時宜にかなったテーマを設定し問題提起をしてきました。「季刊誌」を活用した読者会の開催(リモートを活用)を行い、参加者の学びを深めるとともに読者拡大につなげます。
例:韓国の労働事情(金さんの連載「韓国・非正規労働」など)
例:特集テーマでの学習・交流 (執筆者+読者)
4 コロナ禍(ポストコロナ)における働く人びとの健康権を守る政策提言づくり
① コロナ禍は、労働者のいのち・健康をめぐって、それまでの問題を一層明らかにするとともに、 後遺症・後遺障害の問題も注目されており、引き続き労災・公務災害申請状況の把握と対策など、コロナプロジェクトを継続させ提言作りを行います。
②コロナ禍でカスタマーハラスメントが顕在化しています。労働現場でも関心が高まりつつある感情労働についての学習及び韓国との交流(リモート)などを進めます。
5 建設アスベスト最高裁判決の到達を力に更に救済と予防を広げます
① 建設アスベスト最高裁判決では、国がアスベスト被害を防止できなかった責任を認め、謝罪し、被害の補償を行えとされました。この考え方を基本に、あまりにも低い水準におかれたままになっている石綿健康被害救済法の補償水準の引き上げ、また労災と異なる厳しい認定基準の改訂を行うべきです。具体的に「石綿健康被害救済法」を「石綿(アスベスト)対策基本法」とし、被害補償と予防を一体に進めるものとすることや、給付水準を公害健康被害補償法と同水準にすること。認定基準を労災認定と同水準に。特に肺がんについての厳しい認定基準を改訂すること。予防事業・健康管理体制も一体に取り組めるものとすること。時効の停止、制度活用の周知をはかること。等を改訂案としてまとめ、環境省交渉を含む運動化を進め、その実行を国に迫ります。
② 建設アスベスト給付金制度について広く知らせ、活用を呼びかけます。全商連、民医連とも協力して患者(対象者)の掘り起しを行うとともに、屋外作業労働者の救済実現をめざします。
6 精神障害労災認定基準の改訂への取り組み
政府内専門検討会が12月7日に再開されました。改訂の基礎資料の一つとなる「令和2年度ストレス評価に関する調査報告書」はすでにまとめられています。精神障害の労災申請数は増加しているにもかかわらず、認定数はあがっていない状況があります。また、若い人の自殺も変わらずに深刻で、コロナ禍によりその深刻さは増しています。
現行認定基準の「壁」になっている点を、これまで、いの健全国センターでまとめてきた要請をもとに、加盟団体が相談を受けている事案を通じてブラッシュアップをはかります。学習会を行い、Zoom、YouTubeで視聴を呼びかけます。また、広範に世論を広げる活動を重視し、署名内容を早急にまとめ取り組みます。
7 今日的な働き方における労働安全衛生を考えるために
産業構造の変化により、第3次産業の比重が高まっています。その意味からも、いの健に結集している団体(職種)の取り組みの重要さが増しているもと、従来の労働安全衛生は50人以上の第2次産業の事業所、正規職員を軸に組み立てられており、基本的な見直しが必要になっているのではという問題意識から、安全衛生の基本とされる3管理(作業環境管理、作業管理、健康管理)と「今日的な予防政策」について、専門家の力も借り検討を開始します。